弁護士法人はるか|水戸法律事務所

【交通事故FAQ】コロナ感染疑いで治療費打ち切りになったケース

QUESTION: 治療費を打ち切られそうで困っています。

20204月、車の運転中に後方車両に追突され、頸椎捻挫(むち打ち症)と診断されています。

通院3か月目で一時的にケガの調子が良くなったため、数名の友人と会ってレストランで食事しました。ところがその後、会食参加者の1人が新型コロナウイルス陽性になったとの連絡を受け、私も濃厚接触者として2週間の自宅待機になりました。この間にPCR検査を2回受けましたが、幸いどちらも陰性です。

しかし、濃厚接触が分かってから病院側と相談した結果、通院治療50日間中断せざるを得なくなりました。

 

この件に関して、保険会社から「今後の治療費は支払えない」と言われています。

確かに会食は軽率な行動だったかもしれませんが、自宅待機中から現在にかけて未だむち打ち症の症状に悩まされているので、到底納得できません。仕事も長期間休んでおり、自分で治療費を支払えるかどうかも不安があります。

どうすればいいでしょうか。

 

ANSWER: 保険会社の治療費打ち切りを取消してもらう対応が必要です。

一般論として、被害者の自己判断で通院を1か月以上中断した場合、治療費打ち切りの可能性が高くなります。しかし本ケースでは、コロナ感染疑いについて病院と話し合っており、医療機関側の非常時対応として来院を断っていたことが明らかです。

しかし、被害者自身で説明しても、なかなか上記の事情は理解されないでしょう。

 

結論として、交通事故対応に長けた弁護士に事情説明を任せることで、治療費支払い期間の延長に応じるものと考えられます。

ただし、少なくとも自宅待機期間の休業損害に関しては、やはり「事故との因果関係はない」とされて支払われない可能性が高いと言わざるを得ません。

なお、延長交渉のあいだに発生する治療費の自己負担分については、健康保険や自賠責保険の仮渡金を利用して支出を抑える対処法が考えられます。


交通事故の治療は「症状固定」まで続く

交通事故の損害賠償額は、事故発生から「症状固定」(治ゆ)まで治療状況に基づいて行われます。とりわけ後遺障害等級認定では、症状固定までの「連続性と一貫性」に加え、通院実績や試した治療の種類なども判断材料になります。

これらに伴い、治療を継続して診療記録の内容を充実させられるかどうかが、十分な示談金を得るためのポイントになります。

 

質問のあったむち打ち症は、特に後遺障害が残りやすい症例です。また、事故から相当の時間が経ってから頭痛・肩こり・倦怠感などがひどくなるケースが多くみられます。

将来の生活の質と得られる損害賠償の両面から見ても、交通事故の治療は症状固定まで続けるべきものです。

 


治療費打ち切りトラブルの対処法

相談事例以外にも、通院3か月目で治療費が打ち切られたり、一方的に示談書が送られてきたりするケースが相次いでいます。理由の多くは「過剰診療になっている」「自賠責保険の上限額までしか支払えない」等、到底納得できないものです。

こんなとき、被害者としてどう対応すべきなのでしょうか。


治療費支払いの延長交渉は専門家に任せる

保険会社は同様のケースを多数扱っており、保険料の持ち出しを減らすプロです。
「いろいろな事情を説明しても納得してもらえず、保険会社の担当者の圧力に負けてしまった」というケースが後を絶ちません。
交通事故を専門とする弁護士は、治療費関連の判例知識もさることながら、これまでの経験から「保険会社ごとの対応傾向」に精通しています。被害者の心理的負担を軽くするためにも、治療費でもめそうなときは早めに専門家にバトンタッチして交渉に臨むのがベストです。

なお、被害者が加入している損害保険に弁護士費用特約がある場合、その補償額以内であれば専門家報酬ゼロで依頼できます。被害者の家族が被保険者であっても利用できる可能性があるため、契約内容の確認をおすすめします。


治療は医師の指導がある限り続ける

費用支払いが打ち切られそうな状況でも、早まらずに医師の指導通りに通院を継続しましょう。

治療を自己判断で中断してしまうと、本人の状態に関わらず「症状固定」が推定されてしまいます。この場合、入通院慰謝料や休業損害が十分に支払われないばかりか、後遺障害等級認定でも非該当とされてしまい、結果として、本来得るべき金額から数十万~数百万円以上低い額での損害賠償しか行われません。

 

全額自己負担で治療している場合の対処方法

治療費打ち切りから支払い延長交渉がまとまるまでの間、病院への支払いは被害者が一時的に立て替えます。立替による持ち出し額を抑える方法として、以下2点が考えられます。

 

健康保険を使う

全額自己負担で治療しているなら、健保協会に「第三者行為による傷病届」を提出することで、3割負担の保険診療に切り替えられます。

被害者にも過失割合がある事例では、健康保険を使うことで手元に残る示談金を最大化できるメリットもあります。

 

自賠責保険に被害者請求するか仮渡金を請求する

自賠責保険では、被害者の請求に応じて5万円・20万円・40万円・290万円のいずれかを給付する「仮渡金制度」があります(自動車損害賠償保障法171項・同施行令5条)。

本制度を活用すれば、示談成立前であっても手元資金を確保できます。

 

まとめ

新型コロナウイルスが流行している現状、相談事例に類似したトラブルに見舞われる可能性は、誰にでもあり得ることです。将来の生活の質に見合う示談金を獲得するには、何があっても「症状固定」までは通院環境を確保しなければなりません。

 

交通事故トラブルで治療費打ち切りが発生した場合、速やかに弁護士に対応をバトンタッチしましょう。専門家から「治療中断に合理的な事情があった」と説明することで、保険会社の態度は変わります。