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仮差押えについて

 

*以下の説明は,標準的な仮差押えの手続の説明であって,ケースにより多少異なる場合があることをご了承下さい。

 

 

第1 仮差押えをする方法とその流れ

 

1 申立て

仮差押えを申し立てる前に,差し押さえたい財産を特定しなければなりません。そのため,債務者がどのような財産を所有しているのか調査する必要があります。もっとも,動産(自動車・現金・骨董品など)に関しては,財産が特定できなくても申立自体は可能です。

仮差押えの対象には制限はなく,取引先の資産であれば基本的に何であっても仮差押えをすることができます。例えば,土地・建物といった不動産,商品在庫や機械などの動産,取引先が有する預金や売掛債権も対象となります。もっとも,後述のように,動産や債権に対して仮差押えをすることは取引先の事業に大きな影響を及ぼします。場合によっては仮差押えが倒産の引き金となることもあり得ます。

 

2 必要書類と申立費用

申立てには,通常,以下の書類を揃える必要があります。

仮差押命令申立書

当事者目録

請求債権目録

仮差押債権目録

物件目録

陳述書

・疎明資料

・契約書・催告書の内容証明郵便の写し

また,申立費用として,収入印紙代と郵券切手代がかかりますが,印紙は申立書に貼り付けます。

・収入印紙代(手数料)2,000円(1件につき)

・郵券切手代:債務者及び第三債務者の数により異なる。

 

 

3 仮差押えの要件

仮差押えの要件は,①被保全権利があることと,②保全の必要性があることです。

⑴ 要件①【被保全権利】

被保全権利とは,仮処分によって保全される権利であり,例えば,自社の取引先に対する売掛債権などです。金銭の支払いを目的とするものである必要があります(貸金や売掛債権であれば問題ありません)。条件付又は期限付であっても差し支えありません。

⑵ 要件②【保全の必要性】

保全の必要性とは,仮差押えをしないと将来の判決の執行ができなくなるおそれがあること,例えば,取引先の資産の現状を維持する必要があることなどです。取引先に資力が十分あり,将来の支払い能力に懸念がないような状態であれば保全の必要性は認められません。そのため,仮差押えを認めてもらうためには,取引先の信用状態が悪化しており,判決の執行を待っていたのでは財産の費消・散逸のおそれがあることを示す必要があります。

⑶ 要件の疎明

仮差押えは管轄を有する裁判所に対して申立てをする方法によって行います。申立ての際,仮差押えの要件である被保全権利の存在と保全の必要性について疎明(そめい)をする必要があります。

疎明とは,裁判所に対して一応確からしいという心証を持ってもらう程度に証拠を提出することです。仮差押えは正式の訴訟ではない暫定的な手続きなので,訴訟で要求されるほどの高度の立証は要求されませんが,それでも裁判所が命令を出しても良いと考える程度にまで裁判所を説得する必要があります。

正式な訴訟と同様,仮処分においても自社の主張の裏付けとなるような客観的な疎明資料(文書)を提出することが重要です。例えば,被保全債権の疎明資料としては取引のために作成された契約書,納品書,受領書,請求書などを提出することが考えられます。また、保全の必要性の疎明資料としては,取引先に送付した督促状,FAX,メール,また,取引先の信用状態に関する調査書,報告書,陳述書などを提出することが考えられます。

 

4 書面審理・裁判官(債権者)面接

申立てが完了すると,書面審理,又は裁判官との面接を介して,申立人の主張の正当性を確かめるための証拠調べが行われます。書面審理は,申立書と疎明資料を元に行われます。仮差押えの手続きは債務者に内密で行われるため,債務者へ尋問は行われません。

具体的には,例えば,東京地裁では,仮差押えの申立て後,裁判官との面接が行われます。面接では,申立書に記載した事実関係や疎明資料の内容などについて裁判官から質問がなされます。また,必要に応じて疎明資料の追加提出が求められることもあります。裁判官面接は裁判官と直接話し合って説得するための貴重な機会です。書面での疎明が重要であることは間違いありませんが,特に取引の経緯や取引先の現状については口頭で説明する方が分かりやすいこともあります。

 

5 担保決定

⑴ 債権者への審理が完了すると,今度は担保金を供託するための手続きに進みます。供託は,申立先の裁判所を管轄する法務局にて行いますが,担保金の相場は債務者へ請求する額の2割~3割を目安に考えてください。

この担保金は将来における取引先の自社に対する損害賠償請求権の引当てとなるものです。すなわち,仮差押命令は相手方となる取引先の反論を聴取しないまま,自社の主張だけを聞いて裁判所が発令します。そのため,仮処分命令の発令後に正式な裁判が行われた場合,自社の主張が認められず,結果として仮処分の申し立てが不適切であったとされることがあります。そのようなケースでは,取引先は自社による不適切な仮処分申立てによって一定期間対象資産の処分を禁じられるという不利益を被っています。当該不利益について取引先は自社に対して損害賠償を請求することができます。そのような将来の請求権をカバーするのが仮差押えの担保です。

この担保金の金額は仮差押えの対象となる資産の価額が基準となります。概ね対象となる資産の価額の10%30%の範囲で裁判官が決定します。担保金の金額は取引先の被る不利益の程度や被保全債権の存在の確実性などを考慮して定められます。担保金は法務局に供託する方法で支払います。

⑵ 供託が完了したら,供託が完了したことを裁判所に証明するために,以下の書類を提出しなければなりません。

・供託書のコピー

・当事者目録

・請求債権目録

・物件目録

・登記権利者・義務者目録

・登録免許税用の収入印紙

*収入印紙の金額は,債権額の0.4%(1,000円未満は切り捨て)です。

1,000円未満は切捨て。印紙額が1,000円未満の場合は1,000円。

 

6 保全決定発令

仮差押えが無事完了すると,債務者へ仮差押え決定が送られます。仮差押えは,民事訴訟で債権者の請求内容についての判断がされる前に行われますが,債務者は,裁判所に対し,本案(本裁判)の訴えを提起することを命じるよう申し立てることができます。

当該申立てがあれば,債権者は裁判所が指定する一定期間内に訴えを提起する必要があり,訴えを提起しない場合保全命令は取り消されます。

 

 

第2 仮差押が債務者へ与える効力

 

1 財産が処分できなくなる

訴訟による債権回収は,最終的には強制執行により債務者の財産を差し押さえなければなりません。しかし,訴訟手続から強制執行を終えるまでには,1年以上の期間を要するのが通常であるため,手続きを終えるまでに,預金口座の残高を抜かれる,不動産の名義を変えられるなど,債務者が対象財産を処分してしまう可能性があります。

この場合,債務者が隠した財産を特定できなければ,強制執行をしても債権回収はできません。そこで,仮差押えは,相手方が財産を処分することを禁止し,このような責任財産の散財を回避するのです。仮差押は,スムーズにいけば一週間程度で済ませることができるので,相手方が財産を処分する余裕を与えません。

 

2 債務者にプレッシャーをかけられる

仮差押えをすることで債務者が弁済に応じることがあります。というのも,債務者は仮差押えの処分を受けると,当該財産を処分できなくなり、色々と不都合が生じるためです。

例えば,預金口座の仮差押えをした場合,仮差押えの範囲で預金取引ができなくなりますので,場合によっては預金全部が凍結されてしまう可能性があります。そのため,仮差押えを行えば,債務者との交渉が有利に運ぶことがあります。

 

 

第3 仮差押を利用する上での注意点 

 

1 申立て手続が簡単ではないこと

まず,個人にとって,仮差押えの手続は簡単ではありません。申立ての際に,被保全権利(債権)の存在や,保全の必要性(仮差押えをする必要性)など,法的根拠に基づき申立の正当性を主張しなければならないからです。

 

2 保証金(供託金)を提供しなければならない

仮差押えが完了すると,債権者は訴訟,少額訴訟,支払督促などを介して,債権者の主張が正しいことを本裁判で認めてもらわなければなりません。この主張を裁判所が認めなかった場合,債務者は仮差押えによって被った損害を債権者へ請求することができます。

そのため,債権者は,仮差押えをするにあたり,債務者へ発生するかもしれない損害に備えて,法務局へ供託金を提供しなければなりません。

 

3 債務者が倒産すると仮差押えの効果は無くなる

仮差押えが認められても,債務者が倒産手続(破産・会社更生・民事再生)に入ってしまった場合,仮差押対象財産を含め,同手続内で処理されることになります。仮差押えをしていても,手続での優先弁済を主張することはできません。

 

4 その他

以上のように,仮差押えは自社の主張立証のみで裁判所に発令してもらうことができ,簡易迅速に取引先の資産の現状維持を図ることができます。また,取引先の預金債権や商品在庫を仮差押えすることができれば,取引先にとっては事業継続の大きな支障となり,仮差押えを解除してもらいたくて自社への支払いに応じてくることもあります。仮差押えの本来の役割は資産の現状を維持し、将来の判決の執行を確保するということにありますが、実務上は上記のように債権回収における交渉上のテコとしても活用できます。

他方で,仮差押えはあくまでも資産の現状を維持するものに過ぎず,自社に優先権が認められるわけではないということです。すなわち,仮差押えの対象となった資産は全ての債権者にとっての引き当てとなる財産であり,債務名義さえ取得すればいずれの債権者であっても差し押さえをすることができます。自社による仮差押えが成功しても,そのことによって自社が対象資産から優先的に債権回収を図ることができるわけではありません。債務名義を持った他の債権者との関係では対象資産からの回収において競合することになります。

さらに,より注意すべき点として,先述のように,自社による仮差押えによって取引先の信用状態が悪化し,場合によっては倒産の引き金を引いてしまうリスクがあるということです。例えば,預金債権の仮差押えをすると,その口座を開設している金融機関は取引先の支払い能力が顕著に悪化したと見て融資の回収に走るおそれがあります。また,取引先の顧客に対する売掛債権を仮差押えすると,やはり取引先は当該顧客からの信用を失い、取引を継続することができなくなるおそれがあります。

このように,仮差押えは取引先の信用悪化を招き,結果として自社の債権回収が不首尾に終わることもあるので注意が必要です。他方で,上記のとおり取引先に対するインパクトがある方が自社に対する任意の支払いを促す効果も大きいと考えられ、そのような効能とリスクとを慎重に検討して進める必要があります。

 

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