破産手続についてのご質問
破産手続中,債務者が気を付けておくべきことは?
破産手続は,あくまで自己の資産を清算して各債権者に公平に配当する手続です。したがって,破産のために弁護士が介入した後は,清算すべき資産を無駄に費消したり,財産隠しをしたり,一部の債権者にだけ弁済したり(偏頗弁済)することは許されません。このような行為があった場合,破産しても債務を免責されず,借金を負担したままになってしまうおそれがあります。具体的には,以下の点を守らなければなりません。
・新たに借金をつくらないこと(会社からのみならず,個人からもお金を借りないこと)
・既に負っている借金について,一切返済をしないこと(債権者の公平を害することになります。)
・弁護士に告げていない借入先が判明した場合は,直ちに連絡すること
・ギャンブルや投資,旅行,風俗通いなどをしないこと
・財産隠しや書面の偽造・変造をしないこと,嘘の回答をしないこと
その他,弁護士と連絡を取り合い,指示に従うようにしてください。
弁護士費用や予納金などを捻出できないときは?
破産手続を行うにしても,弁護士費用がかかりますし,管財事件となれば相当額の予納金が発生します。
一括で支払うことが難しい場合は,例えば弁護士費用については分割で支払うように頼むことができます。予納金についても,裁判所によっては一定の積立期間を許すことがあります。
それでもなお費用を捻出できない場合は,法テラスの民事法律扶助の制度を活用することが考えられます。これは,弁護士費用等は法テラスに立て替えてもらい,長期・少額の分割払いで支払っていく制度です(利用には法テラスによる審査が必要です)。弁護士との相談の際にご検討ください。
ただし,管財事件となった場合の予納金については,原則として法テラスの立替えの対象とはなりません。例外的に申立人が生活保護受給者である場合に,法テラスによる第三者予納が行われる可能性があります。
破産手続中や終了後,手元に残る財産はあるのか?
原則として,破産手続開始の時に破産者が保有する財産は,破産によって換価されます。しかし,一定の財産は例外として換価されることなく手元に残されます。これを自由財産といいます。
自由財産に該当するものとして,例えば,99万円以下の現金(破産法34条3項1号,民事執行法131条3号)や,いわゆる差押禁止財産が挙げられます。この差押禁止財産には,衣服や食料,必要不可欠な仕事道具などの生活必需品(民事執行法131条)や給料,退職金など(民事執行法152条)が含まれます。
また,裁判所の裁量によって,上記の財産(本来的自由財産といいます)に含まれない財産を,自由財産として取り扱うことがあります(自由財産拡張)。例えば,時価額の低い自動車や一定の預貯金などがこれに含まれる可能性があります。
免責不許可事由があった場合は,破産をすべきでないのか?
上記に述べた免責不許可事由の存在が疑われるとしても,必ずしも免責にならない可能性が高いとはいえません。ギャンブルによる浪費があったとしても,多額の借金を負った原因が別のところにあるのだとすれば,射幸行為による債務負担行為として免責不許可事由に該当するとはいえない場合もあります。
免責不許可事由があるとしても,裁判所は,一切の事情を考慮して裁量免責を許可することがあります(破産法252条2項)。免責不許可事由の内容が悪質なものでないこと,破産者が破産手続に協力的であったことなどを強調して,なお免責の可能性を探る必要があります。
それでもなお免責を受けられない場合は,任意整理や民事再生などの他の債務整理の方法をとるか,あるいは時効期間の経過を待つなど,適宜別の手段を検討する必要があります。
免責不許可事由の内容が重大である場合は,免責許可の可能性を検討するために,管財事件として破産管財人による観察を求める可能性もあります。