2020.10.9 著作権
無許可でプログラムをインストールして使用すると損害賠償になる?
世間では、コンピュータ・プログラムのいわゆる「海賊版」が、いたるところで出回っています。
海賊版のプログラムを入手して、自分のパソコンで使用するためにインストールすると、著作権侵害として損害賠償請求を受けてしまうことがあるので、注意が必要です。
今回は、海賊版など、プログラムの著作権者に許可を受けていない違法ソフトをインストールして使用した場合の損害賠償などについて解説します。
. コンピュータ・プログラムには著作権がある
「著作権」というと、音楽や書籍、あるいは絵画・彫刻などの美術品をイメージする方が多いかと思います。
しかし、実はコンピュータ・プログラムについても、「著作権」が認められる場合があるのです。
プログラムの著作物とは
コンピュータ・プログラムは、「プログラムの著作物」として、著作権法により保護される場合があります(著作権法10条1項9号)。
コンピュータ・プログラムは、さまざまな指令を組み合わせて、コンピュータに一定の出力を行わせます。この指令・出力などを含めた一連の流れに、作成者の個性が表現されたものとして「創作性」が認められる場合には、コンピュータ・プログラムに著作権が認められるのです。
違法ソフト(海賊版)に注意
コンピュータ・プログラムに著作権が認められる場合、作成者に無許可でコンピュータ・プログラムを複製することは、著作権侵害として違法になります。
しかし、世間に出回っている海賊版は、一般的に作成者の許可を取っていない「違法ソフト」です。 したがって、海賊版を作成する行為は、著作権侵害として違法です。
さらに、エンドユーザーがこのような違法ソフト(海賊版)を入手して、自分のパソコンなどにインストールして使用すると、エンドユーザーも著作権侵害に問われてしまう可能性があるので、十分注意が必要です。
違法ソフト(海賊版)のインストール・使用は著作権侵害になり得る
違法ソフト(海賊版)を自分のパソコンにインストールして使用すると、一定の場合には著作権侵害として違法となります。
業務目的のインストール・使用は違法になり得る
違法ソフト(海賊版)のインストール・使用が著作権侵害とみなされるのは、その違法ソフト(海賊版)を業務上使用した場合です(著作権法113条2項)。
ただし、著作権侵害となるのは、違法ソフト(海賊版)を購入するなどした際に、それが違法複製物であるということを認識していた場合に限られます。
なお、「業務上」の使用には、一般にビジネス目的の使用と考えられるものがすべて該当します。
たとえば、以下のような場合が考えられます。
・会社が自社の従業員に使用させた場合
・会社員の方が会社の仕事を処理するのに使用した場合
・自営業の方が自分の仕事を処理するのに使用した場合
純粋な私的使用目的であればOK
一方、純粋な私的使用を目的として、違法ソフト(海賊版)をインストール・使用する行為については、著作権侵害とみなされることはありません。
ただし、パソコンをビジネスとプライベートの兼用としている場合には、インストールした違法ソフト(海賊版)を純粋にプライベートで使用していると説明するのは困難でしょう。
また、ワープロ・表計算・スケジュール管理など、一般的にビジネス用途に用いられるものと考えられているコンピュータ・プログラムについては、やはり私的使用目的と説明することには無理があります。
このように、私的使用目的を理由として著作権侵害の責を免れることは、明確に合理的な説明がつくような場合以外は難しいと考えられます。
違法ソフト(海賊版)を無許可で業務上使用した場合の損害賠償について
違法ソフト(海賊版)を、オリジナルのコンピュータ・プログラムの作成者に無許可で、業務上インストール・使用した場合、著作権侵害として損害賠償責任を負担する可能性があります。
不法行為に基づく損害賠償責任を負う
著作権侵害のケースでは、侵害者が著作権者に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条)。 違法ソフト(海賊版)のインストール・使用について、不法行為に基づく損害賠償を請求する側は、裁判になった場合には、以下の要件のすべてを主張・立証しなければなりません。
①違法行為(みなし著作権侵害)の事実
=侵害者が、違法複製物であることを知りながら、違法ソフト(海賊版)をインストールして業務上使用したこと
②発生した損害
③違法行為と損害の間の因果関係
使用料(ライセンス料)相当額の損害が推定される
しかし一般に、著作権者の側が、侵害者の行為により発生した損害の金額や因果関係を立証することは困難です。
そこで、著作権法114条3項では、著作権者が著作権侵害を受けた場合、使用料(ライセンス料)相当額を損害の額として、その賠償を請求できるものと定めています。
つまり著作権者は、著作権侵害の事実さえ立証すれば、特に追加で損害額や因果関係の立証を要することなく、侵害者に対して使用料(ライセンス料)相当額の賠償を請求できるのです。
たとえば会社員や自営業者などの個人が、自分が仕事で使うためだけに違法ソフト(海賊版)を使用していた場合には、1台分の使用料(ライセンス料)が損害額として認められることになるでしょう。
一方、会社が従業員に違法ソフト(海賊版)を使用させていた場合には、使用台数分の使用料(ライセンス料)が損害額として認められることになる可能性が高いといえます。
まとめ
著作権が認められるコンピュータ・プログラムの海賊版については、海賊版を制作(複製)する行為だけでなく、エンドユーザーが業務上使用する行為についても、著作権侵害とみなされてしまうので注意が必要です。
個人であれば「私的使用」を主張して責任を免れる道もありますが、業務上使用との区別がつきにくい場面が多いため、海賊版の使用は避けるのが無難です。
また、会社などが従業員に海賊版を使用させる行為は、著作権者からの損害賠償が高額になる可能性があるほか、コンプライアンス上も重大な問題があるため、絶対に避けましょう。