2020.12.7 交通事故
交通事故後の治療費に関するトラブル!医療ミスによる費用と加害者側の関係
交通事故で下腿骨(脛骨)を骨折しプレートとボルトで固定しました。その4か月後にボルト6本の内3本がほとんど抜けています。再手術が必要ですが保険会社は医師の手術ミスであり再手術費用は払えないと言われました。どうしたらよいか困っています
規模の大小はさまざまですが、毎日のように交通事故は起こっています。そして、被害者が怪我を負ったときには、加害者は治療費等の賠償をすることになります。しかしこの治療費は簡単に金額が算定できるものではなく、長期に渡るトラブルを発生させる原因にもなり得ます。以下では事故後、追加で発生した治療費等における問題に関して言及していきます。
1.交通事故後の一般的な流れと問題点
一方の運転行為によって他方の者が傷害を負ってしまったとします。加害者は懲役や罰金刑といった刑事罰を科せられる責任を負うとともに、免許の取消などの行政上の罰を受ける責任を負います。
しかし、これらはあくまで公から受けるペナルティであり、被害者とのトラブルを解決するものではありません。そこで被害者が負った身体的精神的ダメージに関しては当事者間で話し合うか、裁判所を利用して解決を図らなければなりません。実際には当事者間での話し合いである示談交渉によることが多いですが、交通事故においては加害者の加入する保険会社と被害者が交渉する例が多いです。
ただ、ここで問題になるのが、日常的にこういったトラブルを扱っている保険会社と、単なる交通事故の一被害者では交渉力に差があり、被害者にとって満足のいく結果にすることが難しいということです。
たとえば、治療費に関して、いくら必要だから支払ってくれと言っても、それらしい理由を挙げて希望の金額で応じてくれない可能性もあります。また、治療費は即座に全額を決定することが難しく、将来的により多くの費用が必要になることが発覚することもあります。基本的には示談交渉の内容に一度承諾をしてしまうとその後増額することはできず、被害者側が計算を間違えてしまっている場合などには取り返しはつきません。
2.再度の治療・手術にかかる費用の請求
交通事故によって生じた損害は、通常、加害者側に請求できます。しかし治療費のように確定するのが難しいものをいつまでも確定させず、無制限に請求ができるものと認めてしまうと加害者側の立場を非常に不安定にしてしまいます。そこで「症状固定」や「後遺障害」といった仕組みによって、ある程度のところで折り合いをつけることとなっています。
2-1. 症状固定後の費用
基本的に治療費の請求ができるのは症状の固定までです。これは治療やリハビリを続けた結果、症状が定まった状態を意味します。そのため、腕に傷害を負ったとき、外傷や骨折等が回復するまでは症状が固定したとは言えず、その間の治療費は請求ができます。
しかし、これらの怪我が回復した後に残る痺れなどは後遺障害として扱われ、その程度ごとに定義づけられた等級に応じ、逸失利益・慰謝料などを請求して解決が図られます。そこで金額を低く見積もりたい保険会社としては、治療期間を短くするため、症状固定を急かすことがあります。
ただ、常に症状固定後の治療費に関して請求ができないわけではなく、生存に不可欠な治療や、症状の悪化を防ぐために欠かせないもの等に関しては、症状固定後でも請求できる可能性があります。そのため保険会社が「一度約束した金額以上は一切払えない」と主張してきても、請求ができるかもしれません。このときには医師の診断結果等を用いて将来分の治療費について交渉を行います。
2-2.医療ミスによる費用
大きな交通事故の場合、手術を要することもあり、またそれが一度で終わるとも限りません。再手術が必要になることもあるでしょう。
しかし、再手術に関しても、保険会社が支払わないと主張する可能性があります。このとき相手方は医療ミスを理由に拒絶してくることも考えられます。本来必要なものではなく、交通事故を起こした者の責任でもないと言われるかもしれません。しかしここで理解しておきたいのは、例え医療ミスであったとしても加害者にその費用を請求することは不可能ではないということです。
医療ミスでないなら通常通りもともと必要な治療費として請求、そして医療ミスだとしてもそれは加害者と病院側の共同の不法行為として請求し得ます。加害者と病院側は連帯責任となり、被害者はいずれに対しても全額の支払いを求めることができます。再手術に限られず、症状が悪化したり死亡したりした場合には請求ができると考えられています。
今回のケースでも請求はできる可能性が高いでしょう。請求は複雑になるため、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
3.再手術・治療にかかる費用を請求する方法
再手術等にかかる費用も請求することは可能ですが、無条件で、必ず請求できるというものではありません。当然、交渉を持ち掛けなければなりませんし、支払う義務があることを相手方に示さなければなりません。
因果関係の立証
特に医療ミスによる場合には、因果関係を立証することが重要です。
例えば事故によって骨折をした場合において、医師の重大なミスで間違って投与された薬の副作用で死亡した場合、骨折とはまったく関係のないところで死亡の原因があると認められるのであれば因果関係が否定される可能性があります。元をたどれば交通事故が医療行為のきっかけではありますが「交通事故によって引き起こされた死亡」とまで認定することは難しいからです。
そのため、再手術・治療に関しても、交通事故との因果関係を示さなければなりません。逆に言えば、相手方が医療ミスを主張して拒んだとしても、因果関係が示せれば治療費を請求することが可能になります。
まとめ
請求の仕組みとしては以上のように説明ができますが、実際にこれらを実行するには交渉力および立証にかかる準備等が必要になります。そこで、弁護士に相談、依頼し、加害者側との交渉に応じてもらうと良いでしょう。どのような資料があれば因果関係が立証できるのか、弁護士であれば適切なアドバイスをしてくれるでしょう。