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企業の研究開発における重要ルール「職務発明制度」とは

 

青色発光ダイオード裁判を覚えている方は多いのではないでしょうか。企業から研究者へ発明の対価として巨額の支払い義務が認められた有名な事件です。青色発光ダイオード裁判で研究者側が請求の根拠としたのが職務発明の制度でした。

社会にとって有用な職務発明は大きな収益力を持つことがあります。したがって、発明から生じる収益の分配について定める職務発明制度は企業と研究者のいずれにとっても非常に重要な意味を持ちます。そこで、以下では職務発明制度について詳しく解説します。


1.特許権を受ける権利とは

特許権とは、一定期間、特許の対象となる発明を発明者が独占的に実施することのできる権利です。発明について特許権を受けることで、発明について第三者が権利者に無断で模倣することなどを防止できます。このほか、特許の実施権を第三者にライセンスすることにより発明を収益化することも可能となります。

特許権を受ける権利を有するのは、原則として発明者です。発明者とは、発明を現実に行った人のことをいい、助言者や命令者、資金提供者などは発明者とはなりません。したがって、企業等に所属する研究者が発明をした場合に特許を受ける権利を有するのは、本来はその研究者が所属する企業ではなく、研究者本人ということになります。


2.職務発明制度とは

 

もっとも、特許を受ける権利は財産権であり譲渡することが可能です。そこで、発明をした従業員が持つ特許を受ける権利を使用者である企業が保有することとし、その対価として発明者である従業員に一定の対価を与える仕組みが制度化されています。この制度を職務発明制度といいます。

従来の職務発明制度では、特許を受ける権利はまず発明者に帰属することが前提とされていました。しかし、2015年の特許法改正により、企業など発明者を雇用する者が特許を受ける権利を原始的に取得する制度が新たに設けられています。


2-1.職務発明とは

職務発明とは、以下の3点を満たす発明をいいます。

①従業者等(従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員)がした発明であること

➁発明の性質上、使用者等(使用者、法人、国又は地方公共団体)の業務範囲に属するこ     と

➂発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属す     ること

職務発明と対置される概念として、自由発明というものがあります。自由発明とは、従業者等による発明のうち職務発明の定義にあてはまらないものをいいます。例えば、会社員が勤務先の企業での業務とはまったく異なる分野で、個人的な趣味による発明をした場合には自由発明となります。

自由発明に関しては職務発明制度が適用されません。企業が従業員のした自由発明について特許を受ける権利を取得したい場合には、個別に発明者である従業員と交渉してお互いの合意により譲渡を受ける必要があります。


2-2.職務発明による権利の帰属

職務発明がされた場合に、発明に関する権利を原始的に取得するのが誰かについて次の2つのパターンがあります。

・使用者等に原始的に権利帰属する場合

企業が社員である研究者とあらかじめ発明に関する権利の帰属について定めておくことで、職務発明に関する権利が原始的に企業に帰属する扱いにできる制度があります。青色発光ダイオード裁判の後、2015年の特許法改正により新設された制度であり、予約承継と呼ばれます。

予約承継を行うために必要となる使用者等と従業者等との間の職務発明に関する取り決めは、個別の契約によることも可能ですし、社内規程等で定められることもあります。

この取り決め後になされた職務発明については、使用者等が特許を受ける権利を有する扱いとなります。したがって、企業は従来のように従業員から職務発明後に個別に発明に関する権利の譲渡を受ける必要はなくなります。

企業としては、あらかじめ従業員との間で予約承継を定めておけば、青色発光ダイオード裁判のように後から従業員に特許を受ける権利の帰属やその対価について争われるリスクを低減することできるメリットがあります。

また、従来のように職務発明に関する権利が原始的に従業者等に帰属する場合、発明をした従業員が発明に関する権利を使用者以外の第三者に売却するリスクもありました。予約承継を行っていれば、企業としては職務発明に関する権利を確実に取得することができるため、研究開発費の回収の見込みが立ちやすくなるといえます。

・従業員等に原始的に権利帰属する場合

2015年の特許法改正までは、職務発明における特許を受ける権利は原始的に従業員等に帰属することとされていました。現在では企業による研究開発の場面では予約承継が行われることが大半です。

しかし、企業と従業員との間に予約承継の取り決めがない場合には、従来どおり、職務発明について特許権を受ける権利は発明をした従業員に原始的に帰属することになります。この場合、企業が職務発明に関する権利を得ようと思ったら従業員から個別に権利の譲渡を受ける必要があります。


3.発明の対価としての「相当の利益」

上の2つのパターンのいずれにおいても、職務発明をした従業者等は、職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させるか特許権を承継させた場合、又は使用者等のために職務発明に係る専用実施権を設定した場合には、使用者等から「相当の利益」の支払いを受ける権利を有することとされています。

職務発明の対価として発明をした従業員等が使用者等に対して請求できる「相当の利益」については算定方法が問題となりがちです。「相当の利益」の算定に関しては、特許法などで具体的に定められているものではなく、基本的には使用者等と従業者等との間の合意によって定められることになります。

また、「相当の利益」の内容に限定はなく、報奨金など金銭請求権の付与以外にも、海外留学の機会の提供や、ストックオプションの付与などもあり得るところです。万が一、使用者等と従業者等との間で「相当の利益」に関する取り決めがなかったり、算定方法を巡って争いが生じた場合には、裁判等を通じて解決されることになります。


4.まとめ

職務発明に関しては、発明をした従業員と企業との間で紛争が生じる可能性が高いため、事前に企業と従業員との間で職務発明に関するルールを定めておくことが必須です。特に、企業が従業員に支払うべき「相当の利益」の算定方法は、できるだけ解釈に余地を残さないように明確にルール化しておくことが重要です。

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