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親子関係不存在・嫡出推定

生物学的親子関係の有無が嫡出推定に与える影響|最高裁判例をもとに解説

 

民法には、法律上の親子関係を規律する上で強力に機能する「嫡出推定」というルールが定められています。

 

嫡出推定が及ぶ子については、法律上の親子関係を争うための手段が「嫡出否認の訴え」に限定されるため、当事者が親子関係を否定するためのハードルはかなり高くなります。

 

最判平成26717日では、生物学的親子関係がないことが明らかな子についても嫡出推定が及ぶのかどうか、という微妙な論点が争点となりました。

 

以下では、嫡出推定の制度概要とともに、前掲最判の内容について紹介します。

 

 

  1. 嫡出推定とは?

嫡出推定は、民法772条において定められた、親子関係を決定するためのルールの一つです。

 

1-1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する

民法7721項は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定めています。

 

これは、女性が婚姻中に身ごもった子については、(実際には他の男性の子であったとしても)特に反証がない限り、法律上は夫の子として取り扱うということを意味しています。

 

1-2. 嫡出推定が及ぶ要件

嫡出推定が及ぶ要件は、「妻が子を婚姻中に懐胎したこと」です。

 

しかし、厳密にどのタイミングで妻が子を懐胎したかを特定するのは非常に困難なため、民法および判例上、以下のルールが定められています。

 

①婚姻成立日から200日を経過した後、または婚姻の解消・取消し日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する(民法7722項)

 

②すでに夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、または遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、①の期間に懐胎した子であっても、例外的に嫡出推定を受けない(最判平成12314日)

 

1-3. 嫡出推定の反証は可能、ただし嫡出否認の訴えによる必要がある

嫡出推定は、あくまでも推定規定ですので、実際には生物学上の親子関係が存在しないことについて反証すれば、法律上の親子関係を否認することが可能です。

 

ただし、嫡出推定が及ぶ子と、子の母の夫の間の法律上の親子関係を否認するには、必ず「嫡出否認の訴え」という手続きによる必要があります(民法775条)。

 

嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければなりません(民法777条)。

 

親子関係を争うためのもう一つの方法である「親子関係不存在確認の訴え」には出訴期間制限が設けられていないことと比べると、嫡出否認の訴えは、きわめて利用要件の厳しい手続きであることがわかるでしょう。

このような厳しい期間制限が設けられたのは、嫡出推定が及ぶ子については特に、身分関係の法的安定を早期に保持する必要性が高いと考えられているためです。

 

1-4. 嫡出推定を受ける子の側から親子関係の不存在を主張することは認められない

さらに嫡出否認の訴えは、出訴権が夫にしか認められていません(民法774条)。

 

つまり、嫡出推定が及ぶ子自身や、子の母(妻)の側から夫との法律上の親子関係を争うことはできないことになっています。

この点からも、嫡出否認の訴えが非常に厳格な手続きであることがわかるでしょう。

 

 

  1. 最判平成26717日の解説

最判平成26717日の事案の概要は以下のとおりです。

 

①戸籍上の嫡出子である子の側から、父親に対して親子関係不存在確認の訴えが提起されました。

 

②第一審原告(被上告人)である子については、1-2で解説した嫡出推定の要件に従えば、第一審被告(上告人)である父親の嫡出推定が及ぶ状況でした。

 

③しかしその一方で、被上告人と上告人の間には、生物学的な親子関係はないということがわかっていました。

 

2-1. 【事案の争点】生物学的親子関係がなくても嫡出推定が及ぶか

本事案の争点は、夫と子の間に生物学的な親子関係がない場合であっても、民法の嫡出推定が及ぶかどうかという点です。

 

仮に嫡出推定が及ぶのであれば、法律上の親子関係の存否を争う手段は、夫からの「嫡出否認の訴え」に限られます。

この事案では、嫡出否認の訴えの出訴期間がすでに経過していましたので、被上告人・上告人間の法律上の親子関係を争う手段は、もはや存在しないことになります。

また、本事案で実際に提起されている「親子関係不存在確認の訴え」は、不適法として却下されてしまいます。

 

一方、嫡出推定が否定されれば、法律上の親子関係の存否を争う手段として、出訴期間や出訴権者の制限がない「親子関係不存在確認の訴え」を利用できます。

そのため、本事案で提起されている「親子関係不存在確認の訴え」は適法であり、本案の審理において生物学的な親子関係の不存在が認定され、結果として法律上の親子関係も否定されるという結論になるでしょう。

 

2-2. 【結論】嫡出推定優先|親子関係不存在確認の訴えは不適法

最高裁は、本事案のケースでは嫡出推定が及ぶと結論付け、子による親子関係不存在確認の訴えを不適法却下としました。

 

以下は判示の引用です。

 

「夫と子の間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である」

 

原審(大阪高判平成24112日)では、夫の側が生物学上の親子関係がないことを積極的に争っていないことや、子が実父母の下で順調に育てられていることなどを考慮し、嫡出推定が及ばない特段の事情があると判示しました。

 

これに対して最高裁は、上記の事実は、(少なくとも現行法の枠組みにおいては)子の身分関係の法的安定という要請を覆してまで優先させるべき事柄ではない、という価値判断を示したといえるでしょう。

 

 

  1. まとめ|生物学的親子関係の有無は嫡出推定に影響しない

以上のように、生物学的親子関係の有無については、嫡出推定に対して影響しないことが明らかとなりました。

 

前掲最判平成12314日にて示された一定の例外はあるものの、嫡出推定に関するルールについてはできる限り法文どおり運用しようというのが、最高裁の基本的な立場であると推測されます。

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